東京家庭裁判所 平成6年(少)5231号・平7年(少)2361号
主文
少年を医療少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、
第1 法定の除外事由がないのに、平成6年9月17日ころ、東京都大田区○○×丁目××番×号○○××号室(当時の少年宅)において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し、もって、覚せい剤を使用した
第2 覚せい剤使用歴のある者らと交際し、平成7年5月16日には、自己又は他人のため、自己の化粧ポーチの中に覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプロパン0・112グラム及び注射器一本を所持するなどしており、犯罪性のある人と交際し、自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖があり、その性格、環境に照らし、将来、覚せい剤取締法違反の罪を犯す虞がある
ものである。
(適用法条)
覚せい剤取締法41条の3第1項1号、19条(第1事実)
少年法3条1項3号本文及びハ、ニ(第2事実)
(非行事実第2のぐ犯の認定について)
附添人は、非行事実第2のぐ犯の成立を争い、平成7年5月16日朝、少年の自室に置いてあった少年の化粧ポーチの中から発見された覚せい剤と注射器は、少年の前夫Cが少年の知らない間に入れてあったものであるから、少年のぐ犯性を示す事実であるとはいえず、また、少年が、現在交際しているAは、過去に覚せい剤の使用歴はあるものの、現在は覚せい剤とは無縁の生活をしている者であるから、この者との交際も少年のぐ犯性を示す事実であるとはいえないなどと主張する。
しかしながら、事件記録及び社会記録並びに少年審問の結果によれば(本件ぐ犯は調査官立件されたものであるから、社会記録を非行事実であるぐ犯の成否の検討の用に供するのはやむを得ない。)、少年は、平成7年4月ころから覚せい剤を含む薬物濫用歴のあるAと親しく交際するようになったほか、非行事実第1の覚せい剤使用当時、少年と行動を共にしていて少年に覚せい剤を提供したBも時折少年の部屋に出入りするようになっていたこと、同年5月6日以降は、自分の子(平成5年8月10日生)の保育園への送り迎えもしないようになり、3晩くらい全然眠らない様子で、自室のドアを締め切って母親を部屋に入れさせず、何時間も歯を爪楊枝で突っついているなどの不審な行動が見られたこと、そこで、母親は少年が覚せい剤を使用しているのではないかと疑い、同月9日少年の部屋に入ってみると、布団(少年の言によれば、壁にも)に血が飛び散っており、少年の化粧ポーチの中から注射器が発見され、次いで、同月16日朝には、少年の化粧ポーチの中から白い粉と注射器が発見されたので、これらを○○警察署に届けたこと、これに気付いた少年は、弟に対し、「やばい。あれは人から預かったもの。逃げなくては」などと口走り、家を出て数日間帰宅しなかったこと、鑑定の結果、白い粉は覚せい剤塩酸フェニルメチルアミノプロパン0・112グラムであったこと、以上の事実を認めることができる。そこで、これらの事実並びに非行事実第1の覚せい剤使用の罪を犯した当時における少年の覚せい剤への著しい依存傾向や最近における心身状態の不安定さ等を総合すれば、少年が覚せい剤使用歴のある者らと交際し、自己又は他人のため、覚せい剤や注射器を所持するなどしており、その性格、環境に照らし、覚せい剤取締法違反の罪を犯す虞があることは明らかである。
これに対し、少年は、5月9日に少年の化粧ポーチの中から発見された注射器は、その前夜前夫のCと街で会っていて、同人が警察官から職務質問を受けた時、とっさに手渡され、預かっていたものであり、また、同月16日に少年の化粧ポーチの中から発見された覚せい剤と注射器は、自分の知らない間に化粧ポーチの中に入っていたもので、後に、Cが入れたことが判ったなどと弁解する。そして、Cも、少年の化粧ポーチの中から発見された覚せい剤と注射器は、少年のことを忘れられない自分が少年とその恋人Aとを別れさせるため入れたものである、少年とAは覚せい剤の不使用を誓い、どちらかがこの約束を破った時は別れようと話し合っているということだったので、少年の化粧ポーチの中に覚せい剤と注射器を入れておけば、少年がこれを使用し、Aと別れることになるのではないかと思ったなどと供述する。しかし、少年やCの供述は、内容的に著しく不自然である上、少年が同月16日に家を出る時に示した言動や、当時Cが少年の母親や少年の弟に語っていたところ(社会記録参照)と矛盾するものであって、到底信用することができない。また、少年が同月27日逮捕された後提出した尿中から覚せい剤が検出されなかった事実も、何ら前記認定の妨げとなるものではない。
以上の次第で、附添人の上記主張は採用できない。
(処遇について)
非行事実第1の覚せい剤使用当時における少年の覚せい剤への著しい依存傾向(事件記録中の少年の日記の写し等参照)、試験観察中、平成7年に入ってから心情不安定な状態が続き、自殺企図的な行動が見られ、また、不良交友を再開し、生活が乱れ、覚せい剤の自己使用又は他人への使用が疑われるような行動態度が現出したこと、試験観察決定後、少年を更生させるため一所懸命になった母親も、今直ちに少年を受け入れることには拒否的であること、少年の現在の精神状態は専門医の治療を要する状態であること、その他少年の従前の非行歴及び処遇歴等に照らすと、まずは少年を医療少年院に収容して治療及び矯正教育を受けさせ、少年の心情が安定した後は、中等少年院に移送して矯正教育を受けさせることとするのが相当である。
よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項により、主文のとおり決定する。
(裁判官 浜井一夫)